| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-157 (Poster presentation)

アオモンイトトンボにおける雌特異的な色彩多型間での発現変動遺伝子の検出

*高橋迪彦(東北大・理), 高橋佑磨(東北大・学際研), 牧野能士, 河田雅圭(東北大・生命)

色彩多型はさまざまな生物種で知られており、遺伝的な多型の維持機構の検証モデルとして利用されてきた。多様な色彩や行動をもつトンボ目では、一方の性に限定された色彩多型が多くの種で維持されており、その多くは雄による性的ハラスメントの応答として維持されている雌特異的な色彩多型である。雌特異的な多型は、ふつう、雄に似た色彩をもつ雄型雌と雄とは異なる色彩をもつ雌型雌からなる。これらの色彩多型は目内で独立に複数回起源していると考えられる。また、雌特異的な色彩多型をもつアオモンイトトンボ属のアオモンイトトンボとマンシュウイトトンボでは、各色彩型を決定する対立遺伝子の優劣関係が逆転していることが知られている。しかし、これらの色彩多型を創り出す遺伝子は、未だに特定されていない。本研究では雌多型の進化の遺伝的基盤を明らかにするため、アオモンイトトンボの雌の色彩を決定する遺伝子の同定を目的とし、発色の始まる羽化直後の成虫を用いてRNA-seqを行なった。その結果、雄と雄型雌の間では発現量差がなく、かつ雄と雌型雌の間で発現量が有意に異なる3つの遺伝子を検出した。これらの遺伝子配列を用いて相同性検索を行ったところ、そのひとつが多くの動物で性決定に関わるDoublesex遺伝子であることが明らかとなった。Doublesex遺伝子はシロオビアゲハの雌特異的な多型を支配する遺伝子であることが知られており、アオモンイトトンボ属においても色彩多型を生み出す遺伝子である可能性は高い。本講演ではDoublesex遺伝子の型間の発現量差や配列比較の結果について発表する。


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