| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-184 (Poster presentation)

霧ヶ峰の異なる立地条件の草原におけるチョウ類群集の構造と植物との関係

*小椋球(信大・農),大窪久美子(信大・学術院農

近年、半自然草原を主な生息地とする草原性のチョウ類の減少や絶滅が著しく、これらの保全が課題となっている。本研究では本州中部における代表的な草原が分布する長野県霧ヶ峰において、スキー場利用や植生環境等の異なる立地条件におけるチョウ類群集の構造を明らかにするとともに、これら吸蜜植物や植生との関係についても解明し、生息地としての評価および保全策についても検討することを目的とした。

調査地域はスキー場利用や植生環境等の立地条件が異なる9地区の半自然草原を選定した。各地区で500m円内に約1、5kmの調査ルートを設定し、出現したチョウ類の種数および個体数、吸蜜頻度等が測定、記録された。調査は2015年7月下旬~9月上旬に行われた。また、相観植生および管理に関する聞き取り調査も実施した。

全地区では52種、2558個体を記録した。TWINSPAN 解析の結果、全地区は、スキー場利用されている地区グループⅠ(A、F、G、H、I)と在来草原のグループⅡ(B、C、D、E)に大きく二分された。前者はスキー場として利用されており、後者は現在では特に生産的利用のない草原である。前者は維持管理のために刈取り等の植生管理がされており、半自然草原の優占種や遷移状況によってチョウ類群集の構造が異なったと考えられた。特にグループⅠの地区FとHにおけるチョウ類の多様度指数や吸蜜頻度が高かったのは、植生管理されている草原や林縁環境の存在が要因として考えられた。EIおよびRI法についても同様であった。ER法では評価値の高い貴重種が共通種として出現したため、全地区で原始段階が最も高かった。また吸蜜植物の種数および量が多いほどチョウ類の多様性が高く、生息地保全のためには吸蜜植物種の豊富さの重要性が示唆された。


日本生態学会