| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-187 (Poster presentation)

伊勢湾周辺域におけるアカハライモリの遺伝的集団構造

*伊藤玄(岐阜大院・連農), 北西滋(岐阜大・地域), 古屋康則(岐阜大・教育), 向井貴彦(岐阜大・地域)

東海地方の伊勢湾・三河湾周辺の陸水域(伊勢湾周辺域)は、ウシモツゴ(魚類)、ヒメタイコウチ(昆虫)、シデコブシ(植物)など複数の分類群における固有・準固有種が分布する。また、広域分布する種でも遺伝的に固有な系統が知られ、さらに一部の淡水魚や両生類では伊勢湾周辺域内で分化した複数の遺伝的系統が見られる。たとえば、丘陵地に生息するホトケドジョウは、伊勢湾周辺域内で明瞭な遺伝的集団構造を示し、その要因は更新世の山脈の隆起や断層活動などによる分断であることが示唆されている。しかし、地域生物相の成立要因を解明するためには同様な環境に生息する様々な生物の遺伝的集団構造を比較する必要がある。

そこで本研究では、生息環境がホトケドジョウと類似しているアカハライモリを対象として、遺伝的集団構造を明らかにすることを目的とした。伊勢湾周辺域を網羅するように、丘陵地の湿地や小河川など20地点から99個体のアカハライモリを採集し、ミトコンドリアDNAのND6~Cytb領域の塩基配列約1400bpを決定した。Tominaga et al. (2013)によって公表されている塩基配列を加えて、系統樹とハプロタイプネットワークを推定した結果、本研究で採集した個体のmtDNAは全てTominaga et al. (2013)のCENTRAL cladeに含まれ、塩基配列の分化程度は小さかった。そこで、SAMOVAによる遺伝的境界の探索を行ったところ、伊勢湾周辺域のアカハライモリは5グループに分割することが最適と考えられた。すなわち、伊勢湾周辺域のアカハライモリは、近畿地方から養老山脈に分布する集団、志摩半島に分布する集団、紀伊山地南部に分布する集団、静岡県西部に分布する集団、北陸・近畿地方から濃尾平野に広く分布する集団に分けられた。


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