| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-191 (Poster presentation)

千葉県野田市の水田環境におけるコウノトリ餌動物量を決定する要因

*桑原里奈,山崎響子,坂入一瑳(東邦大),大見享子,遠藤立,朝見清孝,大矢篤,長尾雅代((公財)日本生態系協会),佐川志朗(兵庫県立大),長谷川雅美(東邦大)

水田環境で採餌を行う大型鳥類をシンボルに掲げた自然再生の取り組みが近年注目されており、そこでは頂点捕食者にとっての様々な餌生物が生息できる環境づくりが必要である。千葉県野田市は関東におけるコウノトリ個体群再生の拠点として、コウノトリをシンボルに掲げ、自然再生を目指している。本研究は、野田市の水田環境におけるコウノトリの定着可能性と採餌環境整備の方策の提案を目的として、水田における餌動物量の季節変化や、餌動物の重量に基づく採餌環境評価を行った。2014年4月から2015年10月にかけて野田市の水田で野生復帰事業が先行している兵庫県豊岡市と同じ方法により餌生物の生息密度調査を行った。主な餌動物量に影響を与える環境要因について一般化線形混合モデルを用いて評価・抽出した。さらに、放鳥個体の滞在日数と餌重量の関係については、出現個体数に重量推定値をかけ水田1筆あたりの重量を解析した。

今回の調査で65種+spの16,118個体が確認され、バッタ類、カエル類(オタマジャクシを含む)が大半を占めた。カエル類に影響する増加要因は畦の反対側の湛水、草丈、江の存在であった。コウノトリが滞在した水田は餌重量が多かったが、冬期の生物が少なく、野田の水田だけで通年コウノトリの餌動物を供給することは困難と思われた。そこで、ニホンアカガエルの産卵環境のための冬期湛水、オタマジャクシの変態を保証するための中干しの延期、水田への江の設置、水路に落ちたカエルが脱出できるための簡易的工夫等の提案を行った。


日本生態学会