| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-195 (Poster presentation)

高知県中部における草原生植物の分布特性と保全に向けた課題

高橋瑛乃(高知大・院・理)・比嘉基紀・石川愼吾(高知大・理)

高知県では森林面積率が高く,まとまった面積の草地が少なかったのに加え,中山間地の人口減少によって耕作地の放棄が進み,その周辺で維持されてきた小規模草地の減少が著しい。一方,高知県の低地には蛇紋岩地が点在し,そこが草原生植物の生育地として機能してきた。また,高知市街地の南部には皿ヶ峰と呼ばれる標高163 mの丘があり,約20 haのまとまった面積の草地が,数年に1度起きる失火によって維持されてきた。本研究では,高知県中部における草原生植物の分布特性を明らかにするために,明治40年〜平成8年までの旧版地図を判読し,土地利用履歴を明らかにし,草原生植物の生育場所との関係を調べるとともに,蛇紋岩地および耕作地周辺に残存する小規模草地と皿ヶ峰における植生と植物相を比較・検討した。その結果,高知平野周辺では,約100年前には採草地として使用されていた約600 haの小規模草地のほとんどが消失した。植生と植物相の解析には過去に発表された調査データを併用し,TWINSPANを用いて構成種群の相違を抽出し,植物相の比較を行った。草原生植物種数は蛇紋岩地で99種,耕作地周辺草地で53種,皿ケ峰で108種であった。TWINSPANにより,蛇紋岩地の草地植生はコツクバネウツギ,ヤブイバラなど,耕作地周辺はノアズキ,ヤブマメなど,皿ケ峰はモロコシガヤ,ウンヌケモドキなどで特徴づけられた。草原生の絶滅危惧種は,蛇紋岩地で9種,耕作地周辺小規模草地で2種,皿ヶ峰で9種が出現した。これらの結果より,皿ヶ峰は多くの草原生植物及び草原生希少植物の生育地として機能しており,高知県中部の草原生植物を保全するうえで重要であることが明らかとなった。しかし,皿ケ峰の草地では遷移が進んで草地面積が減少しており,今後,皿ケ峰の草地を維持していくための体制づくりが急務である。


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