| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-203 (Poster presentation)

シロアリの腸内原生動物群集にみられる性差

*稲垣辰哉, 松浦健二(京大院・農・昆虫生態)

下等シロアリとその腸内原生動物は相利共生の代表的な例である。シロアリの主食である木材には難分解性のセルロースが多く含まれているが、その分解を担っているのが原生動物やバクテリアである。このような共生微生物は宿主と互いに影響しあっており、例えば宿主の餌、行動、ホルモンなどが共生微生物群集に影響し、逆に共生微生物によって宿主の行動や免疫が影響を受ける場合も多く報告されている。シロアリにおいてはこれまで原生動物群集のカースト間差に着目されてきた。カースト間での餌の違いが原生動物群集に現れることが報告されているが、不妊カースト内における性差に着目した研究はない。原生動物は餌のみを反映するものではないと考えられるため、同カーストにおける原生動物の性非対称性は社会行動、社会免疫などの点においてシロアリの社会に深く関わると考えられる。そこで本研究ではヤマトシロアリReticulitermes speratusのワーカーとソルジャーにおける腸内原生動物群集の性差を調べた。その結果、ワーカーの原生動物群集・個体数においてコロニー依存的な性差がみられた。原生動物の個体数としてはオスの方がメスより多いコロニー、メスのほうがオスより多いコロニー、オスメスともにほぼ同じ個体数の原生動物を持つコロニーがあった。この結果は、今までの研究で見落とされていた不妊カーストの性差を反映しているものであり、この性差が性別分業につながることも推測される。


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