| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-210 (Poster presentation)

ツボワムシの対捕食者誘導防御への浮葉植物オニビシの影響

*大竹裕里恵,鏡味麻衣子(東邦大・理),吉田丈人(東大・総合文化)

被食者の中には、特定の捕食者の存在下で、可塑的に防御形態を発現する種がいる。淡水動物プランクトンのツボワムシは、捕食者のフクロワムシに対し、体側にある突起(側突起)を伸長する。一方、この防御形態は別の捕食者のケンミジンコには有効でなく、ツボワムシの側突起伸長は複数の捕食者の影響を受けると考えられる。印旛沼では、浮葉植物オニビシが夏期に大繁茂し、動物プランクトンの分布を変え、その結果としてツボワムシの誘導防御に空間的差異が生じる可能性がある。そこで、本研究では、オニビシ群落内とオニビシが存在しない開放水面において、動物プランクトンの分布とツボワムシの側突起伸長を比較した。

ツボワムシの側突起伸長は、オニビシ群落の発達初期(6月)には地点差がなかったが、繁茂する7月には有意な地点差が存在し、オニビシ被度が高いほど側突起伸長は小さかった。側突起伸長と捕食者密度の間には有意な関係があり、フクロワムシの多い開放水面では側突起伸長が大きく、ケンミジンコの多いオニビシ帯では側突起伸長は小さかった。オニビシ群落内では、フクロワムシ密度が低いため、側突起伸長が小さかったと考えられる。また、ケンミジンコはフクロワムシを捕食するため、ツボワムシの誘導防御に間接的に影響を与えていたのかもしれない。さらに、ケンミジンコが側突起の長いツボワムシを選択的に捕食することで、個体群内に側突起伸長の小さな個体が多くなった可能性もある。以上から、浮葉植物の繁茂は、捕食者の分布を変化させ、それに応じ、被食者の防御形態が短期間に変化することが明らかになった。


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