| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-223 (Poster presentation)

SSU rRNAの網羅的解析による シロアリ腸内微生物群集混合後の収束パターンの検証

*佐藤 渚(茨城大 院・理), 北出 理(茨城大・理), 野田 悟子(山梨大・生命環境), 飯田 敏也(理研・BRC), 大熊 盛也(理研・BRC)

環境変化への群集応答の研究で、群集同士の融合については未解明の点が多い。シロアリ腸内には原生生物・細菌・古細菌からなる微生物群集が存在し、構成種は代謝や細胞内共生を介して強い相互作用をもつ。先に私達は、種組成がシロアリの種に特異的である共生原生生物群集に着目し、ヤマトシロアリとカンモンシロアリの交雑コロニーを作成して自然群集を混合する実験を行った。当初混合組成であった交雑コロニーの原生生物群集は、最終的に殆どがヤマト型の組成に収束し、1例のみカンモン型となった。しかし形態に基づく同定では、ヤマトとカンモンが共通してもつ原生生物種はどちらに由来するかが不明であった。

本研究では、両宿主種の野外コロニーと2つの交雑コロニーの個体を用い、共生微生物のSSUrDNAの部分配列を標的にパイロシーケンスによる網羅的解析を行った。野外コロニーからは宿主種に特異的な原生生物由来の配列が検出された。交雑コロニーの個体は、ヤマトに特異的な属の配列は受け継いでいたが、カンモン特異的な属の配列はほぼ検出されなかった。両親種が共有する9種では、Teranympha mirabilisを除き、ヤマト特異的な配列は全て交雑コロニーに引き継がれたが、カンモン特異的配列は引き継がれなかった。交雑コロニーの原生生物は、共通種を含めほぼヤマトのものに収束しているといえる。また細菌を対象とした解析では、属レベルで原生生物のような明確な関係性は見いだされなかった。

原生生物群集に関しては、セルロース代謝等に関わる構成種の共適応が群集の強固な結びつきをもたらし、ほぼ群集レベルでの競争・選択をもたらしたと考えられる。


日本生態学会