| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-252 (Poster presentation)

谷津田に生息するトウキョウダルマガエルの餌資源利用と分布の季節変化

*戸塚邦洋(東大院・農), 藤田剛(東大院・農), 宮下直(東大院・農)

トウキョウダルマガエル (以下、カエル) は、水田生態系における主要な捕食者であり、サシバや中型捕食者など高次捕食者の重要な食物生物でもあるため、水田生態系において重要な役割を持つ。本種の小スケールでの生息地選択に影響する要因として、圃場整備による湛水期間の短縮やコンクリート水路の造成による移動阻害など、主に物理環境の変化の影響が注目されてきた。これら物理環境の変化の影響は、本種の餌生物である昆虫などの小型無脊椎動物の生息へも及び、摂食を介して二重にカエルに影響すると考えられる。しかし、物理環境と餌条件の両方に注目して本種の生息適地の評価を行った研究は、限られている。

本研究では、水路や水田の水条件や、水路や水田の形状などの物理環境と、胃内容物調査を通して把握できる餌条件の、谷津田内での本種の分布との関係を明らかにし、本種の生息適地評価を行うことを目的とした。

調査は千葉県北部に位置する水田地帯で行った。約1㎞四方内の4か所の谷津田で、カエルが活動する5月から10月まで調査を実施した。カエルの分布については、畦沿いに設置した調査ルートを移動し、発見した位置と体長を記録した。胃内容物は、強制嘔吐法により採取し餌資源動物の同定と乾燥重量の測定を行い、採取個体の発見場所と体長を記録した。

カエルの密度は、水田に水が張られている5-8月は水田に隣接する畦、水田に水の無い8−10月は水のある水路沿いの畦で高かった。季節をとおして、主に地表徘徊性の小型無脊椎動物を摂食していた。ワラジムシ目とクモ目は季節をとおして利用頻度が高かったのに対し、ハチ目は5—6月、バッタ目は7-9月のみ利用頻度が高かった。発表では、これらの結果を踏まえ、カエルの生息適地条件を検討する。


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