| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-267 (Poster presentation)

外来種ホソオチョウにおける集団形成の適応的意義

*新津伊織, 土田浩治, 岡本朋子(岐阜大院・応用生物)

チョウ目の中には、幼虫期に集団を形成する種が存在する。集団形成による利益として、摂食効率が上昇し個体の成長が促進されることや、生存率が上昇することなどが挙げられている。その一方で、寄生者に寄生されやすいなどの不利益も報告されている。このような集団を形成する利益と不利益は種によって異なり、集団サイズや集団を構成する齢期の内訳もまた種によって多様であると考えられている。アゲハチョウ科に属するホソオチョウ(Sericinus montela)の幼虫は若齢期に集団を形成するが、成長に伴い離散するとされている。これは、若齢期には集団形成による利益が単独によるものより大きく、成長に伴い単独での利益が集団形成によるものを上回るためだと考えられる。本研究では、野外において幼虫の集団サイズを調査し、集団の離散時期を推定した。さらに、幼虫を異なる集団サイズで飼育することにより、集団形成が生存と成長に与える影響を調査し、集団形成の利益と不利益を考察することを目的とした。

合計310個の集団を野外で追跡調査し、このうちの88.4%の集団が同齢期のみで構成されていた。幼虫は2–3齢期に集団から離散を開始し、終齢である5齢期には単独になる傾向が認められた。また、単独区、4個体の小集団区、16個体の大集団区という3つの集団サイズを設定し、幼虫を室内飼育した。その結果、単独区は大集団区よりも幼虫期間が短く、蛹重が大きかった。これらのことから、若齢期には集団形成を行うことが有利であるが、終齢期では単独条件の方が有利であることが示唆された。その要因として、成長に伴って、個体間の資源をめぐる競争がより強くなることが考えられた。


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