| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-288 (Poster presentation)

同所的に繁殖するトノサマガエル属2種における繁殖行動の違いと繁殖干渉の可能性

*伊藤真(京大院・理・動物行動),本間淳(琉球産経/滋賀県大・環境),中西康介(名大・院・環境/滋賀県大・環境),寺澤祐貴,羽田野遥平,西田隆義(滋賀県大・環境)

繁殖干渉とは同所的に生息する近縁種の繁殖活動によって自身の適応度が低下することを指す。繁殖干渉の影響が非対称な場合、種の置き換わりが起こることが知られており、生物の分布パターンを決定する際に重要な要素となると考えられている。カエル類はその繁殖特性上、一般的に繁殖干渉の影響が生じやすいと言われている。日本に生息するトノサマガエルPelophylax nigromaculatus とナゴヤダルマガエルPelophylax porosus brevipodusは同じトノサマガエル属のカエルであり、分布域が重複するため繁殖干渉が生じていると考えられている。さらに、ナゴヤダルマガエルが現在その個体数を減らしており絶滅危惧種になっていることや、トノサマガエルのほうが高い運動能力をもつことなどから、トノサマガエルからナゴヤダルマガエルへの繁殖干渉が生じていることが示唆されてきた。しかし、両種間で繁殖干渉の方向性について直接分析した研究はこれまで行われてこなかった。

そこで本研究では、両種における同時期・同場所での種内繁殖シークエンスの観察を半野外条件下で行うことで、両種が繁殖期にどのような行動をとっているのかを明らかにし、その比較によって繁殖干渉の方向性を予測した。次に、両種を半野外条件下で混合させた実験を行い、実際にどのようなペアで異種間抱接が起こっているかを明らかにした。それらの結果から、両種の繁殖シークエンスが大きく異なっていることが分かり、ナゴヤダルマガエルからトノサマガエルへの繁殖干渉が生じていることが予測された。また、抱接ペアの分析結果も同様の傾向を示し、これまでの仮説と真逆の結果を支持した。


日本生態学会