| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-289 (Poster presentation)

グッピーのメスの脳で発現する配偶者選好行動に関わる遺伝子

*稲田垂穂(東北大・生命),佐藤綾(群馬大・教育),牧野能士(東北大・生命),河田雅圭(東北大・生命)

配偶者選好行動は、ときに極端な性的二型の進化をもたらし、増殖率などの集団の性質にも影響を与えている。メスの配偶者選好行動の進化過程に関して、オスの装飾形質との共進化モデルが提唱されている。こうしたモデルでは、遺伝子レベルで様々な仮定がおかれており、たとえば、Sexy Sonモデルでは、配偶者選好行動と装飾形質の間に遺伝的な相関を仮定している。したがって、共進化モデルの直接的な実証のためには、雌雄の性選択形質の遺伝基盤の解明が不可欠である。本研究は、配偶者選好行動の遺伝基盤を解明することを目的とし、メスの配偶者選好行動とオスの装飾形質に遺伝的な多型があるグッピー(Poecillia reticulate)を用いて、メスの選好行動に関わる遺伝子を探索した。まず、メスの選好行動を定量するため、成熟したメス個体に対して体色が派手なオス・地味なオスを同時に30分間呈示し、メスの行動を観察した。派手なオスを見ていた時間と、地味なオスを見ていた時間を測定し、その合計と比を計算し、これらの値を選好行動の指標とした。次に、行動観察の直後に摘出したメスの脳を用いてトランスクリプトーム解析(RNA-seq)をおこない、遺伝子ごとに発現量と選好行動との関連を相関分析で調べた。さらに、強い相関が見られたいくつかの遺伝子に関して、qPCRによる詳細な発現量解析をおこない、選好行動に関わる遺伝子を絞り込んだ。本講演では、以上の結果からグッピーの選好行動の差に寄与する遺伝基盤について考察する。配偶者選好行動の遺伝基盤の解明は、性選択の進化過程への理解を深めるとともに、集団の性質に対し遺伝子レベルからアプローチすることにもつながると期待される。


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