| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-318 (Poster presentation)

広島県に自生するサクラソウのポリネーターの探索

*知識亜果音(神戸大・農),日下石碧(神戸大院・人間発達環境),吉田康子(神戸大院・農・食資源セ)

異型花柱性の他殖性草本であるサクラソウ野生集団内の遺伝的多様性の維持には、種子繁殖が必要であり、異型間の交配を促進するためにポリネーターの存在が不可欠である。すでにトラマルハナバチの女王がサクラソウのポリネーターであると報告されているが、トラマルハナバチが存在しない状況下においても種子生産が確認されているため、他のポリネーターの存在が考えられる。そこで本研究では、広島県北広島町のサクラソウ自生地において、トラマルハナバチの女王以外の新たなサクラソウのポリネーター探索を行なった。

自生地に計16m2のコドラートを設置し、2015年5月5日から10日および18日の計6日間それぞれの開花数の計数と訪花昆虫調査を行った。訪花昆虫調査は各コドラートについて15分毎に行い、一部を捕獲した。開花数と訪花昆虫調査から訪花頻度を算出した。捕獲した昆虫の口吻長とサクラソウの花器形態を測定した。さらに、口吻に付着した花粉数を計数し、花粉移動量(花粉数×訪花頻度)を算出した。

その結果、7科11種の訪花昆虫が確認され、その全訪花昆虫の口吻に花粉が付着していた。捕獲した昆虫のうち8種の口吻長は、サクラソウの花筒長と同等かそれよりも長く、吸蜜できる長さであった。一方で3種の訪花昆虫については口吻長が花筒長に比べて短かったが、葯には十分に届くことが確認された。本研究の結果から、トラマルハナバチを除き、ツリアブ科、ミツバチ科、アゲハチョウ科など10種が新たなサクラソウのポリネーターであることが明らかになった。さらに、訪花頻度が高い昆虫種の花粉の移動量を比較したところ、ツリアブ2種がトラマルハナバチと比べて多かったことから、本自生地において最も送粉に貢献しているポリネーターである可能性が示唆された。


日本生態学会