| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-337 (Poster presentation)

佐渡で推進される"生きものを育む農法"は水田に生息するトンボ類にやさしいか?

*坂本大地(新大・農),武山智博(岡山理科大院・総合情報),関島恒夫(新大院・自然科学)

里地里山に代表される農地景観は、多様な生物の生息空間として重要な機能を果たしてきたが、近年、土地利用形態の変化や標的外生物に対する殺虫剤の影響により、生物多様性の低下が懸念されている。このような状況を受け、新潟県佐渡市では、環境保全型農業の推進役を担う、朱鷺と暮らす郷づくり認証制度を導入し、水域を創出することによる生物の生息地再生、あるいは減農薬による生物多様性への配慮を推し進めてきた。制度の施行以後、制度に登録される農業者数は増加しており、制度の費用対効果を高めるという観点から、これまでの取り組みに対する生物の応答を明らかにし、結果を制度へ還元することが課題となっている。本研究では、認証制度が生物に与える影響を明らかにする指標として、トンボ類を選定した。トンボ類は水域に依存した生活史を有し、その時空間的な変動に鋭敏に反応することから、認証制度の導入に伴って実施されてきた、様々な形態の水域の創出とその空間的な広がりに対して明瞭な応答を示すことが期待される。加えて、認証制度では、殺虫剤に使用について、使用量以外の項目は農業者に一任されており、使用する種類あるいはその組み合わせは、明確な規定が定められていない。近年、一部の種において、負の影響が報告されていることを鑑みると、使用された殺虫剤に対するトンボ類の応答を明らかにすることは急務の課題である。

本発表では、佐渡市国仲平野に生息するトンボ類を対象に、その生息地選択に影響する環境要因を明らかにするとともに、水田で使用される殺虫剤の種類及びその組み合わせによってトンボ類の個体数にどのような差異が生じているのかを評価することで、認証制度の有効性について考察する予定である。


日本生態学会