| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-338 (Poster presentation)

絶滅危惧種ニホンイヌワシの遺伝的多様性の解析

*佐藤 悠(京大・野生動物),前田 琢(岩手県環境保健センター), Rob Ogden(Royal Zoological Society of Scotland),井上-村山美穂(京大・野生動物)

ニホンイヌワシ(Aquila chrysaetos japonica)は日本周辺にのみ生息しており、絶滅危惧IB類に指定されている。生態研究により多くの情報が得られているが、遺伝的多様性の評価や近親交配についてはこれまで十分な情報が無かった。域外保全も視野に入れた保全や繁殖を行う上で、遺伝情報は必須である。本研究では主要な生息地の一つである岩手県を中心に試料を収集し、マイクロサテライトによる遺伝的多様性の解析とmtDNAのControl Region(CR)とPseudo Control Region(ΨCR)のハプロタイプ多様度の解析を行った。また動物園の飼育集団についても同様に解析した。

マイクロサテライト解析には野生65試料(岩手県62、青森県1、栃木県1)、飼育24試料(野生由来10、繁殖14)を用い、イヌワシで新規開発したマーカー16種および近縁種のマーカー11種の計27マーカーの型判定を行った。mtDNAハプロタイプ解析には、野生31試料(岩手県29、青森県1、栃木県1)と飼育15試料(野生由来7、繁殖8)を用い、CR(444 bp)およびΨCR(472 bp)の塩基配列を解読した。

マイクロサテライト解析の結果、野生ではHo=0.50、He=0.59、F=0.16であり、飼育集団ではHo=0.56、He=0.56、F=0.00であった。ハプロタイプ多様度はCRとΨCRを組み合わせた結果、野生でh=0.76、飼育集団でh=0.70となった。野生の試料の採取地に偏りがあるが、「個体数が少ないにもかかわらず、遺伝的多様性は高い」可能性が示された


日本生態学会