| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-339 (Poster presentation)

房総半島南部におけるアライグマの捕食圧による在来種への影響評価

*山﨑響子,吉田和哉,長谷川雅美(東邦大・理)

北米原産のアライグマによる日本の生物相への影響は深刻であり、両生爬虫類など様々な動物への捕食圧や農業被害がもたらされている。捕食者としてのアライグマは、原産地では地上営巣性鳥類に対する捕食圧を与えている事例があるが、日本における鳥類への影響を定量的に明らかにした研究はまだない。そこで本研究では、地上営巣性、樹洞営巣性、そして樹上営巣性鳥類の生息密度を比較し、アライグマによる捕食圧を解析した。

調査は、千葉県内において、すでにアライグマが高密度で生息するいすみ市と、まだ分布拡大の初期にあり密度が高くない館山・南房総市で行った。アライグマの捕食にさらされている可能性が高い鳥類として、地上営巣性のホオジロと樹洞営巣性のシジュウカラを、捕食圧から免れていると考えられる鳥類として、樹上営巣性のヒヨドリを対象とした。ホオジロについては千葉県内の分布記録を用いてMaxEntモデルから調査区画内の在確率を推定し、ホオジロにとっての生息適地が2地区で同等であることを確認したうえで、ホオジロの生息密度を比較した。シジュウカラとヒヨドリについては、アライグマの痕跡調査を行った神社の社寺林にてスポットセンサスを行った。

その結果、ホオジロの生息適地率は地域間で差がなかったが、生息密度はアライグマの高密度地域で有意に低かった。シジュウカラ・ヒヨドリの在確認率については、調査地域間では有意な差が得られず、アライグマの密度により生息が制限されているとは言えなかった。しかしシジュウカラの在確認率はアライグマ高密度地域で半減していた。これらの結果は、アライグマの捕食にさらされやすい鳥類から捕食圧を受けていることを示唆するものである。


日本生態学会