| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-352 (Poster presentation)

家畜伝染病予防法による消石灰散布が土壌生態系に及ぼす影響評価

*南純一(近大院・農), 中谷剛(近大・農), 高橋和樹(近大・農), 坂上吉一(近大院・農), 森美穂(近大院・農)

畜産現場において伝染病などが発生した際、畜舎内はもちろん土壌をはじめとする畜舎周辺環境中の有害微生物を消毒するために消石灰は古くから日本や欧米などを中心に世界中で散布されてきた。日本国内では、農水省が1回500~1,000 g/m2の散布量を推奨しているが、明確な散布方法や基準、上限値は示されていない。これまで殺菌目的の消石灰散布が環境中の微生物を含む土壌生態系にどのような影響を及ぼすかについて調査した研究例は存在せず、野外における消石灰散布の殺菌効果を評価した例は非常に少ない。本研究では、in vitro系と疑似的野外系の異なる2種の条件下における、土壌微生物への影響評価と殺菌効果、散布方法の検討を行なった。また、野外に消石灰散布区を設け、実際に消石灰を散布して900日以上にわたり、土壌化学性・物理性と土壌微生物群への影響を調査した。実際に散布した結果も含めて上記3種の評価を総合し、有害微生物防除に有効でかつ土壌微生物への影響の少ない消石灰散布量の算出と散布方法の確立を試みた。

In vitro試験より土壌微生物は病原菌、土壌以外の環境微生物(湖沼、水田)より飽和消石灰溶液に高い耐性を有していることが示された。疑似野外試験と野外試験では消石灰は散水により殺菌効果が迅速に低下すること。土壌微生物菌数が散布量・散水条件によらず影響を受けないことが明らかになった。野外試験では散布方法や濃度により散布区との生菌数の差はみられなかった。しかしながら、未散布区に比べて消石灰散布区では、土壌pHは1以上、カルシウム濃度は約20 cmol(+)/kの差が900日以上継続していた。


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