| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-363 (Poster presentation)

種多様性に配慮したシバ・チガヤ型造成草地の植生分布と土壌環境

*白土晃一, 山田晋(東大院・農), 根本正之(明治大・農), 大黒俊哉(東大院・農)

半自然草地は草原生植物の重要な生育地であるが、現在では土地利用の変化によりその多くが消失した。種多様性の高い半自然草地を再生するためには、多様な草原生植物の生育特性の解明および、それらの生育が可能となる草地造成・管理技術の確立が必要である。そこで本研究では、チガヤ・シバを優占種とするモデル草地を造成し、導入された草原生在来植物の初期段階における生育状況を把握した。2014年、西東京市の東大生態調和農学機構内の牧草が優占する旧牧草地において、表層土を深さ50-100cmの下層土と反転したうえで、市販の張りシバを900m2の範囲で市松張りに張った。その目地のすべてにチガヤの苗を1株ずつ植栽し、目地の一部に在来種十数種を播種、または苗を植栽した。2015年、モデル草地の骨格となるチガヤとシバはほぼ定着した。しかし、シバに関しては目地が完全に被覆される箇所から未被覆の箇所があるなど、生育状況がばらついた。表層土壌のECがシバ・チガヤの密生する箇所から疎生する箇所にかけて漸減したことから、2種の生育のばらつきはある程度土壌養分に起因することが考えられた。苗を植栽したキキョウ、スズサイコ、ススキでは生育不良個体が多く、ユウガギクとメガルカヤではほぼ全個体が生育不良となった。カワラナデシコとトダシバでは生育不良個体が少なかった。キキョウの生育不良個体はチガヤ・シバの疎生地に多い一方で、スズサイコのそれはチガヤ・シバの密生地に多かった。ススキの生育不良個体はチガヤ・シバの生育状況に関係なく分布した。これらのことから植栽種の生育が担保される土壌養分量は種ごとに異なることが示唆された。


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