| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-367 (Poster presentation)

Open-Top-Chambers による温暖化実験がコナラ根系の動態に与える影響

新銀仁善(鳥大院・農),佐野淳之(鳥大・農・森林生態系管理学研究室)

本研究はコナラ二次林内に自生しているコナラ実生に温暖化を想定したオープントップチャンバー(Open Top Chamber以下OTCと記述)を設置し、温度の上昇が根系の動態に与える影響を明らかにすることを目的とした。根系の動態と温度の関係を明らかにするために、アクリル製の根箱を作成し、根箱とOTCを調査林内のギャップ下と閉鎖林冠下に設置した。調査地内のギャップ下で根箱のみの処理区をGap、OTCと根箱を組み合わせた処理区をOTC(Gap)とした。また閉鎖林冠下で根箱のみの処理区をClose、OTCと根箱を組み合わせた処理区をOTC(Close)とした。根箱1箱につきコナラ稚樹1個体を移植し、根箱を10箱ずつ、それぞれの処理区に埋設した。毎月の根の成長量を測定し、調査終了時に全個体の乾燥重量を測定した。また、OTCの内と外で気温、地温、土壌水分、開空率を測定した。根系の動態に影響を与える要因を特定するために重回帰分析を行い、各環境要因の影響度を検討した。コナラ稚樹の根の伸長成長量と乾燥重量はOTC(Gap)でOTC(Close)やCloseより有意に高く、月ごとの根の伸長成長量は7~8月にOTC(Gap)でCloseより有意に高かった。温度はOTC(Gap)、Gap、OTC(Close)、Closeの順で高かった。開空率はギャップ下で有意に高く、土壌水分に差はなかった。コナラ稚樹の根の発達には主に温度と光が影響を与えると考えられる。コナラ稚樹の乾燥重量と7~8月の根の伸長成長についてそれぞれ重回帰分析行った結果、コナラ稚樹の根の乾燥重量の増加には光が、伸長成長量の増加には気温が最も影響を与えていた。これらのことから、コナラ稚樹は光によって根系の発達が促進され、7~8月の気温の上昇によって根の伸長量が増加することが考えられた。


日本生態学会