| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-391 (Poster presentation)

外来シダ植物、ホウライシダの分布拡大と鉄道

*丹羽貴寛(横国大・理工)・小池文人(横国大)

ホウライシダはこれまで外来種として扱われてこなかったが、低地の岩場でイワタバコなどの在来種に脅威を与える可能性があるため、(1)分布域の現状、(2)今後まだ拡大するか、(3)好適な環境、(4)鉄道駅からの分布拡大の可能性、(5)歴史的侵入順序、の解明をめざして研究を行った。ホウライシダの分布域を鉄道駅を単位とした関東全体の大きな空間スケールと、既分布の鉄道駅周辺の鉄道から離れた地域のラインセンサスによる小さな空間スケールの,2つのスケールで分布調査を行った。大スケールの調査では好適ハビタットを持つ駅を単位とした解析を行い,出現の有無を目的変数に,環境と最近隣の既分布駅からの路線距離などを説明変数とした回帰を行った.小スケールの調査ではライン上の好適ハビタットへの出現を目的変数とし,環境と当該駅からの距離を説明変数とした回帰を行った. その結果ホウライシダの現在の分布域が明らかになり,過去(1978年)の分布域と比較すると拡大している様子が確認できた。大スケールの解析では既分布駅からの路線距離が重要な変数であり,また小スケールの解析においても既分布駅からの距離が重要な変数であったため,ホウライシダは現在も分布拡大中であると考えられ、大スケール的に今後分布すると考えられる地域と、大スケールでは既分布である地域の内部に小スケール的には今後分布が拡大すると考えられる駅から離れた生育可能地の、両方が存在した。鉄道を用いたモデルで説明されたため,ホウライシダの拡大経路の一つとして鉄道がある可能性が示唆された。また今回の調査範囲内では最低気温や最低降水量に影響されず、海岸線近くや水路脇のコンクリート壁・石垣を好んでいた。推定された侵入順序は,神奈川県内では横浜から同心円状に周辺の駅に定着していた。


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