| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-401 (Poster presentation)

不妊化操作を用いたアメリカザリガニの個体数抑制に関する研究

*大野秀輔, 柴田昌三, 深町加津枝, 今西純一 (京大・農・森林)

現在、日本には様々な外来種が侵入・定着し、在来の生態系に悪影響を及ぼしている。多くの外来種については効果的な駆除方法が確立していないが、昆虫においては不妊化を用いた手法で根絶に成功した例が存在する。本研究では代表的な外来種の一つであるアメリカザリガニ(Procambarus clarkii)の駆除を目的とし、簡便な不妊化処理として腹脚の切除効果を確認した上で、不妊化個体の放流の有効性についてシミュレーションを用いて検証した。

アメリカザリガニの腹脚を切除することによる繁殖阻害の効果を検証するため、オスとメスを1ペアずつに分け、オス・メス共に正常、メスの腹脚を切除、オスの腹脚を切除の3条件で飼育観察を行い、交尾回数を計測した。また、オス3個体、メス3個体のグループに対しそれぞれ条件の異なる不妊化処理を行い、飼育観察によって抱卵したメスの個体数を調査した。その後、先行研究からアメリカザリガニについてのレスリー行列を作成し、個体群成長率、安定生育段階齢構成を算出した。さらに、飼育観察で得られた情報とあわせて個体群動態モデルを作成し、個体群から一定の割合を除去した場合と不妊化した場合でシミュレーションを行った。

飼育観察により腹脚切除を施した個体も正常個体同様に交尾行動をとることがわかった。腹脚切除条件のメスが抱卵できず卵を落卵したことから、腹脚切除によるメスの不妊化効果はあると考えられる。また、集団飼育実験ではオスの腹脚を切除した条件でのみメスの落卵が確認されたことから、オスの不妊化の影響が示唆された。以上のことから、腹脚切除処理を施した個体は正常個体の繁殖を阻害すると考えられる。さらにシミュレーションの結果、不妊化処理を施すと同じ割合を除去するより駆除効率が高いことが示された。


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