| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-407 (Poster presentation)
東日本大震災に伴う津波により、仙台湾名取川河口にある東谷地地区に、約10haの干潟が新規に出現した。干潟は多様な生物の生息場所を提供するだけでなく、有機物の分解を通じた浄化作用など生態系機能の面からも重要な生態系と指摘されている。そこで、本研究では東谷地の干潟としての重要性を評価することを目的に、基礎生産と呼吸速度の測定を行った。この干潟は底質・塩分濃度が空間的に不均一で、局所的に多様な生物群集が形成されている。そこで、簡便な閉鎖式チャンバーを開発し、多地点でCO2フラックスを同時に測定することで生産・呼吸速度を推定し、この新規干潟の生態系機能を評価した。
CO2フラックスを測定するためのチャンバーは、高さ15cm、底面積33.2cm2の透明なペットボトルを用いて作製した。暗チャンバーは外部をアルミホイルで囲い遮光して群集呼吸速度を測定し、透明の明チャンバーで総生産速度を測定した。2015年7月から12月にかけて、干潟内15地点にチャンバーを設置し、チャンバー内のCO2濃度変化はCO2アナライザーを用いて現場で測定した。また、各地点の環境要因として、クロロフィルa量、底質(粒度組成、有機物含有率、全炭素、全窒素)、酸化還元電位、含水率を測定した。加えて、直径15 cm、深さ20 cmのコアサンプラーを用いて底質を採集し、1 mmメッシュでふるい、底生動物も採集した。採集した底生動物は個体数および湿重量を測定した。
測定の結果、日生産速度、日呼吸速度は7月に最も高く12月にかけて減少することがわかった。また、いずれの月も日呼吸速度は生産速度より高く、その差は12月にかけて小さくなった。本発表では生産・呼吸速度に及ぼす環境要因や底生動物の影響を考察するとともに、他の干潟における測定値とも比較することで新たに出現したこの東谷地干潟の生態系機能について議論する。