| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-409 (Poster presentation)

生態系を利用した管理による熱帯農地の急速な土壌改善効果:土壌炭素・窒素動態に着目して

*木村純平(横国大院・環情),Ainin Niswati,Jamalam Lumbanraja,Irwan Banuwa(Univ. Lampung),藤江幸一,金子信博(横国大院)

慣行農業は様々な環境問題を引き起こし,農地土壌の持続性も損ねている.そのため,土壌-植物系の生態学研究を農業に応用することで,持続的な農地利用と作物生産の両立を図ろうと考えた.不耕起・草生栽培(NTW)は,「農地を耕さず,雑草を生やし,その地上部のみを適宜刈り敷きする管理」であり,土壌炭素貯留機能が優れている(先行研究).それは雑草による植物多様性効果やミミズを介した物質循環など,土壌-植物系の働きが利用できるためである.そこで本研究では,土壌劣化が深刻な熱帯へのNTWの応用を試み,窒素動態の解明と熱帯におけるNTWの生産性および持続性の評価を行った.

2014年1月にインドネシア・スマトラに,耕起管理(耕起/不耕起)と雑草管理(除草剤/草生)の2要因で設定された試験圃場を設けた.対象期間はキャッサバ栽培期間(2014年6月~翌年4月)とし,土壌,雑草,溶脱,有機物分解速度,土壌侵食,ミミズ,土壌微生物,収量(根)などを調査した.

収量は,耕起・除草剤≧不耕起・草生>耕起・草生=不耕起・除草剤であった.侵食量は,耕起栽培に比べ,不耕起栽培で少なかった(p=0.057).また,草生栽培は,除草剤栽培に比べ,ミミズや微生物量が有意(p<0.05)に多く,土壌炭素も有意に貯留され,窒素収支も有意にプラスであった.そのため,耕起・除草剤栽培(慣行栽培)は,収量を得る代償として農地の持続性を失っていた.その一方でNTWは,土壌炭素を急速に貯留し,十分な収量を得ることができており,雑草やミミズを介した窒素循環が貢献していた.これらのことから,NTWは収量を損ねずに,熱帯の農地土壌を急速に改善できることが明らかになった.


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