| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-414 (Poster presentation)
近年、日本の人工林の多くが約50年生となり伐齢期を迎えているが、木材価格の低下等により伐採が行われない管理放棄林が増加している。この管理放棄林を減少させる方法として伐期を2倍以上に延ばした長伐期林業が注目されているが、伐期だけを長期化し、間伐を行わない長伐期林業では時間とともにバイオマス(t/ha)の増加速度が低下してしまうことが指摘されている。しかし、施業方法を変えることで、このバイオマスの低下は引き起こされないのではないかと考え、本研究で検証を行った。
調査は大分県内の約30年生の管理放棄林、約35年生の短伐期林業地、約50年生と約80年生の長伐期林業地で行った。
毎木調査で胸高直径 と樹高と樹木密度を測定し、ここから森林バイオマスを推定した。年輪解析から求めた直径成長曲線を利用して100年間の森林バイオマスの動態をシミュレートした。さらに、この森林バイオマスに市場に出た木材中に固定されたバイオマスを加えた総バイオマスも求めた。
長伐期林業地と管理放棄林の森林バイオマスを比較すると長伐期林業地の方がバイオマスは大きくなった。
長伐期林業地と短伐期林業地の森林バイオマスを比較すると、100年間の森林バイオマスは長伐期林業地の方が大きかったものの、総バイオマスは短伐期林業地の方が大きかった。これは木材中のバイオマスが短伐期林業地の方が大きかったからである。バイオマスは比較の仕方によって優劣が異なり、一概にどちらが優れているかを判断することはできない。
以上から長伐期林業の短所であるバイオマスの増加速度の低下は、施業方法を変えることで補償することが可能だと言える。