| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-415 (Poster presentation)

草地群落での蘚類優占が土壌呼吸へ及ぼす影響

*久良 祐紀子, 山田 俊弘, 奥田 敏統(広島大学総合科学部総合科学科)

瀬戸内海に位置する宮島では、ニホンジカ(Cervus nippon、以下シカ)の採食圧によって不安定な代償植生として半自然草原が維持されていると考えられるが、今よりさらに採食圧が高くなると、草地は退行遷移を起こしてシバ地が裸地化するか、シカの非嗜好性植物である蘚類の群落になる。本研究では、シカの強度採食圧が生み出す植生の違いが土壌呼吸に及ぼす影響を明らかにすることを目的に、2015年6、7、10、12月に宮島多々良潟のシバ(Zoysia japonica)、ハイゴケ(Hypnum plumaeforme)、スナゴケ(Rhacomitrium canescens)が優占する草地群落で調査を行った。相対優占度より分類したシバ優占エリア、蘚類優占エリア、シバと蘚類が混生する中間エリアについて、土壌呼吸の測定と、調査地で土壌呼吸に影響を及ぼしていると考えられる環境要因(①植生の現存量、②土壌温度、土壌含水率、③土壌有機物、④蘚類のアレロパシー)を調査した。

調査地のどのエリアにおいても土壌呼吸は季節変化を示したものの、調査期間を通して、土壌呼吸はシバ優占エリアで最も高く、蘚類優占エリアで最も低かった。(K W test、p<0.001)。環境要因を見ると、①蘚類優占エリアよりシバ優占エリアで根の現存量が多い、②蘚類優占エリアよりもシバ優占エリアで土壌呼吸の温度依存性が高い、③シバ優占エリアで土壌中の総炭素・窒素量が多いことが明らかになった。さらに、④蘚類のアレロパシーによって微生物活動が抑制されている可能性が示唆された。①より、蘚類優占エリアの根呼吸量はシバ優占エリアより小さいと考えられる。また②~④は、シバ優占エリアに比べて蘚類優占エリアでは微生物量そのものが少ない、もしくは微生物活性が低く抑えられている可能性があることを示唆した。


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