| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-416 (Poster presentation)

富山県において窒素飽和・非飽和状態下にある落葉広葉樹林間の窒素動態の比較

*牧野奏佳香(京大院農), 徳地直子(京大フィールド研), 福島慶太郎(首都大工), 川上智規(富山県立大工)

窒素飽和現象については様々に研究されてきており、負荷された窒素(N)量が累積するにしたがって森林生態系外への硝酸(NO3-)流出に変化が現れることが概念的に示されている。しかし、N負荷量がほぼ等しいにもかかわらず渓流水のNO3-濃度が大きく異なる場合も報告されており、窒素飽和のメカニズムには未解明な部分が残されている。

富山平野中央に位置する呉羽丘陵(KR)と射水丘陵(IM)は丘陵間の距離が約5kmと近接しており、2丘陵における近年のN負荷量は約15kgNha-1yr-1(Honoki et al. 2001)でほぼ等しい。それにもかかわらずKR内の集水域でのみN負荷量以上のN流出量が見られ、2丘陵間の窒素飽和段階に明瞭な違いが見られる。

そこで本発表では、2丘陵における窒素飽和段階の違いを明らかにする目的で、2丘陵における降水・渓流水・土壌水(深さ20cm、50cm、100cm、200cm(KRのみ))の養分濃度(NO3-や硫酸(SO42-)等)、流量の長期変動について解析を行った。

1998年から1999年のKRにおける降水と1999年から2013年のIMにおける降水のNO3-濃度やSO42-濃度には2丘陵間で大きな違いはなかったにもかかわらず、渓流水NO3-濃度の平均値はKRではIM の約8倍、SO42-濃度の平均値はKRではIMの約2倍であった。土壌水のNO3-濃度やSO42-濃度もKRの方がIMより有意に高かった。KRにおける経年変化について見てみると、降雨出水時の渓流水NO3-濃度と全渓流水SO42-濃度、深さ100cmと200cmにおける土壌水NO3-濃度が有意に低下し、深さ20cmと50cmにおける土壌水SO42-濃度が有意に上昇してきていた。


日本生態学会