| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-421 (Poster presentation)
半乾燥地の草原植生に存在する灌木は、落葉による養分の供給や、日光遮断による蒸発や塩類集積の抑制を行う。一方で、塩生植物タマリスクは、根から吸収した塩分を葉から排出し、落葉により表層土壌に塩分を供給するため、塩類集積を促進する。土壌中の高い塩分濃度は、微生物の生育や活性を減少させ、窒素無機化速度を低下させることが知られおり、塩生植物の存在が微生物や窒素動態に影響を及ぼすと考えられる。
本研究では、黄土高原の草原植生において、土壌の塩分濃度や水分、養分の蓄積量、さらには窒素の無機化や硝化、それを担う微生物の存在量や種類を指標に、タマリスクが樹冠下の土壌の窒素動態や微生物動態に与える影響を、樹冠外と比較することにより明らかにすることを目的とした。
本調査地では、タマリスクの樹冠外と比べて、樹冠下の塩分濃度は低くなっていた。また土壌pHや含水率も樹冠下と樹冠外で有意に異なっていた。無機化・硝化速度は樹冠下で高い傾向にあったが、無機化や硝化を行う細菌の存在量は樹冠下と樹冠外で同程度であり、古細菌の存在量に関しては樹冠外で多くなっていた。以上より、タマリスクが塩類集積抑制効果を持ち、窒素無機化速度を増加させることが示唆された。しかし、窒素無機化速度の増加は、単純に塩分濃度低下による土壌微生物の増加を介して起こったわけではなく、pHや含水率などの様々な土壌要因が複合的に影響した結果だと考えられる。