| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-425 (Poster presentation)

林齢の異なる5つのアカマツ林における炭素収支の比較

*鈴木英里(早稲田大学・教育), 鈴木庸平,宮嶋恵里花,墨野倉伸彦,鈴木真祐子,新海恒(早稲田大学・院・先進理工),小泉博(早稲田大学・教育)

森林生態系の炭素収支は林齢によって大きく異なるとされるが、林齢差が生態系純生産 (NEP) に及ぼす影響を同じ気候帯、樹種において比較した研究は少ない。

本研究では、冷温帯の林齢の異なる5つのアカマツ林 (6、20、32、57、92年生) において、 成長量とリターフォール量、土壌呼吸速度を測定し、バイオメトリック法によってNEPを算出することで、各林分の炭素収支の比較を行った。

その結果、NEPはそれぞれ – 0.6、3.3、1.1、2.5、1.5 t C ha -1 year -1 (6、20、32、57、92年生) となった。6年生林分においてNEPが負の値となったのは、 他の林分と比べて地温が高く、また伐採撹乱後の影響が最も強く残っているため、土壌中の従属栄養生物呼吸 (HR) が純一次生産量 (NPP) を上回ったためと推測される。20年生が大きな吸収源となったのは、この時期に葉の生産力や新葉の割合が増加し、林分全体の光合成能力が最大となったためと考えられる。32年生以降は、旧葉の割合とCF比が増加したため、炭素固定能力が低下し、 NPPが抑えられたと推測される。また林齢の増加に伴ってHRが低下することが示唆されたが、これは撹乱影響の緩和と林冠閉鎖に伴う地温低下によるものと考えられる。したがって6年生は炭素放出源、20年生で最大吸収源となるが、32年生以降、吸収能力が低下していくことが明らかになった。森林生態系の炭素収支の検討や管理にあたって、その森林の林齢を考慮することが必要不可欠であり、特に幼齢林が炭素放出源となる可能性は無視できないと考えられる。


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