| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-428 (Poster presentation)

森林生態系における埋没腐植土の地化学的・微生物学的特性

*Kaneko, M. (Rakuno-gakuen Univ.), Suetsugu, R.(Tokyo Univ.), Isobe, K. (Tokyo Univ.), Hobara, S.(Rakuno-gakuen Univ.)

陸域生態系土壌には、表層1mの範囲において約1500PgCの炭素蓄積があると推定されている。しかしながら、表層土壌と同様に、多くの炭素蓄積があると考えられる深層土壌の炭素動態については不明確な部分が多い。北海道の深層土壌には、数千年に渡って大量の有機物を保持している埋没腐植土層が広範囲に分布しており、これらの長期的な有機物蓄積メカニズムを把握することは、深層土壌における炭素蓄積を把握する上で重要な指標となると考えられる。そこで本研究では、有機物が大量に含まれる埋没腐植土層の炭素をはじめとした物質の動態や生化学性を把握することを目的とし、埋没腐植土層中の物理的および化学的特性の把握、環境中の物質動態に大きく寄与する微生物群集構造の解析を行った。分析結果から、表層土壌と比較して埋没腐植土層においても、全炭素および全窒素量、土壌水分量や交換性塩基が高くなる傾向が示された。また、有機物吸着性土壌アルミニウムおよび鉄の結果から、アルミニウムと全炭素については強い相関性がみとめられた。微生物群集構造の解析結果では、いずれのプロットにおいても、表層土壌と埋没腐植土層において高い割合で微生物の存在が確認された。以上の結果から、埋没腐植土層における炭素蓄積のメカニズムとしては、土壌中に多量に含まれるアルミニウム腐植複合体の存在や、風雨などの撹乱が表層に比べて少ない非常に安定的な深層環境が複合的に作用することで維持されることが示唆された。また、埋没腐植土層があることによって土壌深層においても土壌表層と同等のないしはそれ以上に豊富な栄養環境が形成され、高い微生物バイオマスを維持していることが示唆された。


日本生態学会