| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-435 (Poster presentation)

暖温帯アカマツ林とコナラ林における炭素動態の比較 ~根圏滲出物を考慮したバイオメトリックNEP~

*新海恒, 鈴木庸平, 鈴木真祐子(早稲田大・院・先進理工),友常満利(神戸大・院・農),小泉博(早稲田大・教育)

生態系純生産量(NEP)を評価することは森林生態系の炭素循環を理解することに繋がる。しかし従来の研究では根圏滲出物量(Exudation)が無視されており、正確なNEPを推定できていないと考えられる。そこで本研究ではExudation(E)を考慮に入れ、同一環境下における樹種によるNEPの違いを比較し、その違いが何に起因するのかを明らかにした。

調査は暖温帯の近接したアカマツ林(常緑針葉樹)とコナラ林(落葉広葉樹)で行った。Eについては稚樹を室内で育成し、滲出された有機物量を生態系スケールへと換算し推定した。この値と成長量(⊿B)、枯死量(LF)の総和から生態系純一次生産量(NPP)を算出し、NPPと従属栄養生物呼吸(HR)の差からNEPを推定した。

Eはアカマツ林(0.3 tC/ha/year)よりもコナラ林(1.1 tC/ha/year)の方が4倍程度高い値を示した。これらの値がNPPに占める割合はそれぞれ4.6%と12.4%であった。したがってEはNPPに大きく寄与しており、炭素循環を考える上で無視できないと示唆された。またアカマツ林とコナラ林のNPPはそれぞれ6.3 tC/ha/yearと8.8 tC/ha/yearとなり、コナラ林の方が高い値を示した。HRに大きな差がなかったため(アカマツ林:6.1 tC/ha/year、コナラ林:6.5 tC/ha/year)、NEPはコナラ林の方が高い値を示した(アカマツ林:0.2 tC/ha/year、コナラ林:2.3 tC/ha/year)。このNEPの差は特にNPPを構成するEと⊿Bによって影響を受けていることが分かった。


日本生態学会