| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-008 (Poster presentation)

シカの影響を受けた草原群落における植生保護柵の設置年の違いが群落の回復プロセスに与える影響

*大津千晶, 長池卓男(山梨県森林研)

ニホンジカの影響によって植生が衰退した草原群落において、植生保護柵の設置時期の違いが種構成の回復過程に与える影響を評価した。

調査はシカの影響による植生の衰退が進んでいた山梨県櫛形山の半自然草原で実施した。2011年に2010年、2011年に設置された植生保護柵(以下、それぞれ2010年柵、2011年柵とする)内および柵外にコドラートを設置した。2011年から5年間、各コドラート内に出現した植物種の被度、植生高、群落優占種であったアヤメの株数を記録した。種構成の回復目標を1981年に同じ群落内で記録された種構成とし、各年の種組成と1981年の種組成間の非類似度指数を算出した。

種数は全ての処理区で増加傾向にあり、3処理区間で種数に大きな違いはなかった。種構成の回復は柵外ではほとんど進んでいなかった。一方、2010年柵では年ごとに回復が進行していた。2011年柵では設置後4年目から回復傾向が始まり、2015年時点では2010年柵ほど回復していなかった。分類群別の被度変化では、柵外ではグラミノイドが優占する状態が継続していた。柵内では両柵ともにグラミノイドの減少と双子葉草本の増加がみられた。ただし、2010年柵では単子葉の広葉草本の被度が増加したのに対し、2011年柵では被度はわずかに増加するのみであった。アヤメの本数は、柵外と2011年柵では明瞭な変化傾向はみられず、少ないままであったが、2010年柵では増加傾向にあった。以上の結果から、柵の設置は種構成の回復に効果があったが、設置が1年遅れると回復程度が低くなり、回復が始まる時期にも遅れが生じた。特に、アヤメを含む単子葉広葉草本の回復程度はニホンジカの排除が遅れることによって大きく阻害されることがわかった。


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