| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-027 (Poster presentation)

外来水生植物であるチクゴスズメノヒエの増加に対する河川水辺植物の応答

*斎藤達也, 赤坂宗光(農工大)

現在、多年生の外来水生植物が国内の河川に数多く侵入しており、その中には、洪水により形成される裸地に定着するものも多い。そのような外来水生植物は、裸地の地表面を急速に被覆することから、裸地を更新適地とする一年草の成長や繁殖に対し何らかの影響を及ぼすと予想される。外来水生植物の侵入に対する一年草の成長・繁殖の応答は、外来水生植物による一年草の置換の機構を理解する上で重要な事象であるが、これまで定量的に評価されてこなかった。本研究では、外来水生植物の侵入が一年草の成長・繁殖に及ぼす影響について検討した。

2014年秋、府中市の圃場において、外来水生植物であるチクゴスズメノヒエ(以後、チクゴ)の匍匐茎を埋設したポットと無処理のポットを準備し、その上に多摩川中流域の裸地で採集した土壌を撒きだした。ポットは3集団に分け、最高水位が地表面下の1、3、5 cmのいずれかになるように設定したトレイ内にそれぞれ設置した。ポット内に撒きだした土壌から発芽した植物の内、一年草であり出現頻度の高かったヤナギタデ、オオイヌタデ、ヒロハホウキギクを対象種とした。2015年秋まで対象種を生育させた後、ポット内の種全てを掘り取り、その茎長と繁殖器官の有無を記録した。

チクゴを埋設したポットでは、オオイヌタデとヒロハホウキギクの繁殖個体の割合が少ない傾向がみられた。チクゴの存在はヤナギタデの繁殖に影響しなかった。チクゴの存在は、全ての対象種の茎長に対し負の影響を及ぼす傾向があり、特にヒロハホウキギクで顕著であった。また、茎長に対するチクゴの影響の程度は水位によって異なった。本発表では、チクゴの量の増加が各対象種の茎長・繁殖に及ぼす影響についても水位を考慮しつつ検討し、本種の侵入に伴う一年草の置換の機構について議論する。


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