| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-029 (Poster presentation)

島嶼における北限、奥尻島ブナ林の種組成と葉緑体ハプロタイプとの関係につい て

*並川寛司(北教大・札幌・生物),北村系子(森林総研・北海道),松井哲哉(森林総研),高橋 誠(森林総研・林育セ)

北海道の南西部,渡島半島の西側に位置する奥尻島は,日本海側の島嶼におけるブナの北限である。この奥尻島のブナ林の種組成と葉緑体ハプロタイプとの関係について明らかにするために,17か所に調査区を設定した。また,比較対象として対岸の渡島半島(10箇所),下北半島から北上山地北部を中心とした東北地方北東部(9箇所)にも調査区を設定し,植物社会学的な植生調査を行い36の植生資料を得た。これらの植生資料に加え,新潟県以北の東北地方日本海側で得られた文献からの植生資料(14)を加え,植物社会学的な表操作を行った。

上に示した36の調査区において葉を採取し,その葉緑体DNAの変異(ハプロタイプ)の同定を行った。また,文献資料の調査区のハプロタイプについては,高橋(未発表)の結果を参照した。

植物社会学的な表操作の結果,奥尻島,渡島半島,東北地方北東部のブナ林は共通の種群で特徴づけられ,東北日本海側のブナ林とは組成的に異なることが分かった。また,ハプロタイプとの対応を見ると,奥尻島,渡島半島,東北地方北東部の林分のうち,寡雪な地域に分布の中心を持つ種群で特徴づけられる林分では概ねハプロタイプBを示したのに対し,寡雪な地域に分布の中心を持つ種群を欠く林分では概ねハプロタイプAを示した.また,多雪条件下にある東北日本海側の林分ではハプロタイプAを示した.これらの結果から,調査した地域のブナ林においては,種組成およびハプロタイプと積雪の多寡との間に密接な関係のあることが推察された。


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