| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-034 (Poster presentation)

ランダムフォレストによる森林復元:東南アジアの潜在植生の推定

*小黒 芳生・饗庭 正寛・中静 透(東北大・院・生命)

森林の減少は気候の調整や水の供給など、様々な生態系の機能・サービスに影響する。このため、人工衛星などを用いた森林面積のモニタリングが行われてきた。一方、森林が供給する生態系サービスは森林の種類により大きく異なることが知られている。しかし、過去どのような種類の森林がどの程度減少したかを示した研究は少なく、特に人工衛星技術が発達する以前にどのような種類の原生林が失われたのかを定量的に示した研究はない。

本研究では人工衛星データを元にした東南アジアの植生図を用い、機械学習の一種Random Forest法を用いて現存する原生林の種類(※)と気候・土壌・標高・緯度・経度との関係を表すモデルを作成した。このモデルを用いて現在森林が失われた場所の原生林の種類を推定し、現在までどのような種類の原生林がどの程度減少したのかを集計した。

対象とした地域全体では熱帯乾燥落葉林の原生林が最も減少率が高く、亜熱帯乾燥常緑林・熱帯乾燥常緑林・マングローブ林の原生林も減少率が高かった。また、近年でも湿地林・熱帯多雨林の原生林で減少が続いていた。国別の結果を見るとマレーシア・インドネシア・カンボジアでは現在でも原生林が減少し続けており、マレーシアでは湿地林と熱帯多雨林、インドネシアでは湿地林、カンボジアでは熱帯乾燥常緑林の原生林の減少が激しいことが示された。

国により減少している原生林の種類が違うため、これらの結果は森林減少の生態系機能・サービスへの影響も国によって異なる可能性を示している。今後このデータを森林の種類ごとの生態系機能・サービスデータと結びつけることで生態系機能・サービスの時間変化を定量化できるだろう。

※:熱帯乾燥落葉林・亜熱帯乾燥常緑林・亜熱帯多雨林・熱帯乾燥常緑林・熱帯多雨林・山地林・マングローブ林・湿地林


日本生態学会