| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-076 (Poster presentation)

葉の配置と向きが稚樹のガス交換に及ぼす影響の評価

Miyazawa, Y.*(Univ. Hawaii Manoa), Umeki, K.(Chiba Univ.)

林床に生育する樹木にとって、弱光環境での光不足を克服すべく、葉の向きと配置を調整することで光獲得量および光合成生産を増やすことは知られている。こうした形態的な光環境への純化適応は職部の成長および生存と強く関係すると考えられるが、シミュレーション以外での評価はほとんど行われていない。一方、近年発達した、細い幹枝や葉柄に取り付けられる微小樹液流センサーを用いることで、葉、枝、個体からの蒸散および光合成のモニタリング、およびモデル出力値の校正が可能になりつつある。こうした中で問題となることが、形態的な光環境の馴化が、樹液流センサーで感知できるほどの蒸散速度の違いを生み出すのか、という点である。本研究では樹形の3次元構造の実測値を基にした蒸散速度の推定値と、個体形状(樹高および樹冠投影面積)以外を全く考慮しない単純化した樹形データを基にした蒸散速度を比較し、その差を異なる時期ごとに計算した。稚樹の 樹形および個葉のガス交換データについては、九州大学演習林内の常緑針葉樹人工林の林床個体を用いて収集した。樹形データおよび上層の葉の配置データを、樹形解析ソフトYplantを用いて解析し、個葉ごとに光強度を計算した。光強度の計算値を基に葉面の熱収支モデルを用いてガス交換速度を算出した。一方「単純化」したモデルでは、群落多層モデルを用いて、葉の配置をランダムとして計算を行った。近隣個体からの直達光の被陰の影響を除去するため、三段階に設定したClumping factorを組み込んで直達光の透過と葉による吸収量を計算した。広く使用されている樹液流センサー(熱消散式およびHeat ratio式)の野外実測時のノイズと比べることで、生育する光環境に馴化に起因する蒸散速度の増加を検出可能かどうか検証する。


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