| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-104 (Poster presentation)

野外における遺伝子発現量の予測

岩山 幸治*(龍谷大), 本庄 三恵(京都大), 岩崎 貴也(JSPS), 永野 惇(龍谷大/京都大/JST さきがけ)

野外に生育する植物は、その環境条件に応じて多様な表現型を見せる。環境条件の違いは、遺伝子の発現量の変化を通して表現型の違いを生み出すと考えられる。そのため、野外環境における植物の表現型と環境条件の関係を明らかにするためには、環境の変化がどのような遺伝子発現の変化を引き起こすのかを明らかにすることが有効と考えられる。

近年の技術の発展により、多数のサンプルについて多くの遺伝子の発現量を網羅的に定量することが可能となってきているが、扱えるサンプルの数にはまだ限りがある。また、野外で採取したサンプルには、様々な要因の揺らぎが含まれており、環境の変化に起因する遺伝子発現量の変化を特定することが困難となる。

本研究では、野外で採取された植物のサンプルにおける遺伝子発現量の予測を行うためのモデルを構築する。高精度な予測を可能とするモデルがあれば、サンプルのない時刻、条件における遺伝子発現量を補間、推定することや、揺らぎやノイズを取り除き、真の発現量を推定することが可能となる。予測精度の高いモデルは、必ずしも真のモデルと一致するわけではないものの、このようなモデルは野外環境の変化への植物の応答メカニズムに関する示唆を与えると期待される。

本発表では、環境要因と遺伝子発現量の関係を記述するモデル及び、実際に野外で栽培されたイネのサンプルにモデルを適用した結果を紹介する。2013年に栽培されたイネのサンプルのデータを学習用とテスト用に分け、テスト用のデータでモデルのパラメータを学習したのち、残りのテスト用データについて予測を行った。多くの遺伝子について、高い精度で発現量の予測が行われていること、また学習の結果、いくつかの遺伝子について既知の分子基盤と整合性のあるモデルが得られたことを示す。


日本生態学会