| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-134 (Poster presentation)

菌従属栄養植物サクライソウの分布は共生菌の優占度の影響を受ける

*大和政秀(千葉大・教育), 高橋弘(岐阜大・教育), 下野綾子(東邦大・理), 日下部亮太(千葉大院・教育), 遊川知久(国立科博)

菌従属栄養植物サクライソウ(Petrosavia sakuraii)のアーバスキュラー菌根(AM)共生には特定のAM菌群との間に高い特異性が存在する。サクライソウは絶滅危惧IAに分類される希少植物であるが、この特定のAM菌群(共生菌)の分布がサクライソウの分布と増殖の決定因子となっている可能性が考えられた。そこでサクライソウの個体数の多い自生地(100個体以上/100 m2;長野県南木曽町)と個体数の少ない自生地(10個体以下/100 m2;岐阜県可児市)を対象として、サクライソウ個体周辺の木本植物の根に共生するAM菌群集を調査し、サクライソウの共生菌と考えられるAM菌群の検出頻度を両自生地間で比較した。それぞれの自生地でサクライソウ8個体を対象とし、花茎から20 cmの箇所において直径5 cm、深さ10 cmのコアサンプラーを用いて木本植物の細根を採取した。根抽出DNAからAM菌由来のSSU rDNAの部分塩基配列をAM菌特異的プライマーによって増幅し、得られた配列を97%の塩基配列相同性に基づいて区分したところ、Glomeraceaeに属する配列が7タイプ(Glo1-Glo7)に区分された。このうちGlo1の配列はいずれも既報のサクライソウの共生菌の配列と99%以上の相同性を有したため、Glo1をサクライソウ共生菌と同一分類のAM菌群と見なした。Glo1の検出頻度は、南木曽の自生地で54.9%、可児市の自生地では13.2%となり、AM菌群集におけるサクライソウの共生菌の優占度がサクライソウの個体数に強く影響していると考えられた。


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