| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-154 (Poster presentation)

北海道東部におけるカンバ属の分布と海霧

*鎌内宏光(金沢大・臨海),赤坂宗光(東京農工大・農),嵜元道徳(京都大・フィールド研)

大洋辺縁部では季節的に総観規模で移流霧が発生する。北太平洋北東部では春から秋に太平洋高気圧の発達に伴って供給される高温な水蒸気が寒流によって冷却され、霧となって沿岸域を覆う。北海道東部の太平洋岸では春から夏に沖合に親潮が存在するため霧の発生日数は年間100日に達し、冷涼で日照時間が短く高湿な気象が夏を中心に観測される。そこで本研究では海霧とカンバ属の分布の対応関係を検討した。根釧台地と周辺に調査地点を一辺10kmの格子状に設けてカンバ属の分布を記録した。優占するダケカンバとシランカバは排他的に分布し、シランカバが内陸の低〜中標高地に、ダケカンバは内陸の高標高地と沿岸の低標高地に分布していた。ダケカンバは北海道の森林限界付近に分布する高山性種であり、内陸の中〜高標高地における2種の分布は標高に沿った垂直分布と考えられた。しかし沿岸部にもダケカンバが出現分布することから、海霧による生育期の冷涼な気象条件が沿岸部でのダケカンバの分布を可能にしていると考えられた。これは、全調査地点の環境条件のうち6月の気温において11ºC付近を境界に2種の分布が入れ替わる事により支持された。


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