| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-157 (Poster presentation)

分断化景観における樹木群集の組成に履歴が与える影響

*富田瑞樹(東京情報大), 菅野洋(東北緑化環境保全), 平吹喜彦(東北学院大), 原慶太郎(東京情報大)

大規模攪乱によって生じた森林パッチにおける樹木群集の種組成は,攪乱前の森林の種組成と,攪乱後の森林パッチの分布やサイズ,攪乱後に加入した樹木の種特性に依存すると考えられる.津波の浸水域を対象に,①津波から残存した森林パッチの分布と面積,②森林パッチの林冠層と林床を構成する樹種,③津波後に定着した実生,④津波前の土地被覆と標高を調べた.

仙台市の津波浸水域に残存する森林パッチを踏査し,津波後の空中写真(2011年,2013年)を参照しながら森林パッチの分布図を作成した.森林パッチの林冠層および林床に出現した樹木の種名と,林床の植被率を記録した.津波後に定着した実生については芽鱗痕から樹齢を推定した.攪乱前の土地被覆については“しおかぜ自然環境ログ”の“震災前植生図”を,標高については2006年に取得された5mメッシュDEMを用いた.

攪乱前の土地被覆にかかわらず,大面積の森林パッチでは出現種数が多い傾向が見られた.大面積パッチは主に海岸林が残存したものであった一方,小面積パッチには屋敷林や社寺林に由来するものもあった.海岸林由来のパッチではマツの他にカスミザクラやコナラが,屋敷林や社寺林由来のパッチではケヤキやエノキ,シロダモ,ハンノキが主に出現した.また,林冠層の出現種数は後者で多い傾向が見られた.林床には,林冠層に同種が不在の稚樹や実生の他に,津波後に新規に加入した実生も確認された.林冠層を構成する樹木の種組成にはパッチの履歴が強く影響しているが,林床に新規に加入した実生の種組成には種子散布様式や各パッチにおける林床の状況,あるいはパッチサイズやパッチ間距離などの要因が影響していると推察された.


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