| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-181 (Poster presentation)

ヒノキ人工林における列状間伐1年後の下層植生の種特性と動態

*渡邉仁志,片桐奈々,岡本卓也(岐阜県森林研)

ヒノキ一斉人工林には,壮齢以降の過密化に伴い下層植生が衰退し,表土流亡が発生しやすくなるという森林管理上の問題がある。本研究では下層植生の衰退したヒノキ人工林における下層植生の回復を目的として,岐阜県養老郡養老町(標高580m)の52年生林分(南東向き斜面,平均傾斜35度)において列状間伐を実施した後,下層植生の動態を調査した。

調査地では2015年2~3月に2伐4または5残の列状間伐(材積間伐率35%)を行った。間伐前の林床は下層植生に乏しく,また,調査地では土砂移動量が非常に多いこと,埋土種子が少ないことが明らかになっている。同年6月,伐採列および残存列にそれぞれ4反復の調査区を設け,各調査区の中央に各6個の小方形区(1m2/個)を設置した。調査項目は1成長期後(2015年10月)の相対散乱光強度,小方形区の間伐直後と1成長期後の種組成および植被率とした。

調査区の平均相対散乱光強度は伐採列では18.8%,残存列では17.5%で,両区の違いはみられなかった。間伐直後の下層植生の植被率(平均値)は両区とも1%以下であった。1成長期後の植被率(平均値(値の範囲))は,伐採列では2.3(0.9~5.5)%,残存列で1.1%(0.4~1.8)であった。両区とも植被率は微増したが,どちらの調査区においても顕著な植生回復は認められなかった。1成長期後に観察された種は,アカメガシワ,キイチゴ類,タラノキ,タニウツギなどで,先駆樹種が主体であり当年生実生が多かった。一方,高木種はヒノキ,アカマツ,リョウブなどわずかであり,草本種やシダの出現頻度も低かった。調査地では伐採列も含めて光条件の改善が大きくなかったことに加え,埋土種子の少なさ,土壌侵食の多さなどが植生回復に影響を与えている可能性が考えられた。 


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