| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-198 (Poster presentation)

二次林ではなぜカシノナガキクイムシに穿孔されても生き残る木が多いのか

*山崎理正, Pham Duy Long(京大院・農), 伊東康人(兵庫農技総セ), 安藤信(京大フィールド研)

カシノナガキクイムシは集団でブナ科樹木に穿孔すること(マスアタック)で健全木も枯死に至らしめるが、天然林と比較すると二次林では穿孔被害木の生存率が高い。穿孔生存木では繁殖成功度が低いので、このような状況はカシノナガキクイムシにとって適応的ではない。二次林において穿孔被害木の生存率が高くなる原因としては、[1]二次林では寄主木のサイズが相対的に細く、若齢で抵抗性が高い樹木個体が生存している可能性、[2]寄主木の密度が高い二次林ではマスアタックが特定の樹木個体に集中しきらず、結果的に低密度の穿孔しか受けなかった樹木個体が生存している可能性、があげられる。仮説[1]が正しければ、穿孔生存木は穿孔枯死木よりサイズが細いと予測されるが、先行研究によればそのような傾向は認められていない。仮説[2]が正しければ、穿孔生存木は穿孔枯死木の周辺に集中して分布していると考えられる。これを検証するために、穿孔枯死木と穿孔生存木の分布パターンを解析した。

京都府東部のミズナラとクリが優占する二次林における2008年から2014年までの被害木の分布データを利用して、pair correlation 関数の一種である O-ring statistic を計算し、各年について穿孔生存木が穿孔枯死木の周囲でどのように分布しているのかを解析した。その結果、穿孔生存木は穿孔枯死木に近づくほど集中度合が高く、いずれの年も半径 50m 圏内ではランダム分布と比較して有意に集中していることが明らかとなった。二次林では近接して集中的に分布する数本の寄主木が同時期にカシノナガキクイムシに穿孔され、その中で穿孔がより集中した個体が枯死し、集中しなかった個体が生存していることが示唆された。


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