| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-227 (Poster presentation)

水辺の環境改善による水生生物の多様性の変化~住友ベークライト(株)静岡工場のビオトープの事例~

山田辰美(常葉大・社会環境),*法月直也,関川文俊(富士常葉大環防研),熊谷孝善,永野晃(住友ベークライト)

近年、民間企業においてCSRの一環で自然との共生、生物多様性の観点から、事業所内にビオトープを造成する事例が増えている。本報告は、水生生物の推移から、事業所内へのビオトープ造成による地域の生物多様性の貢献について検討した。

住友ベークライト株式会社において、地域の生物多様性への貢献や生き物のネットワークの拠点とすることを目的として、静岡工場にて平成24年度から平成28年度までの5ヵ年計画でビオトープ造成を進めている。ビオトープ造成にあたり、予定地における動植物の事前モニタリング調査を実施し、現状及び地域の生態系に配慮した造成計画を作成した。造成地は、調整池及び緩衝池としての水域(約1ha)とその周辺の緑地に設定した。モニタリング調査の結果、魚類は4科7種、水生生物は14目20科27種であり、広大な水域を有する割に種数及び個体数ともに少なかった。その要因として、水際は波浪で切り立ち水生植物は少なく、エコトーン及びハビタットが不足していることが考えられた。一方、当該地周辺では生息地が少なくなり、静岡県版レッドデータブックで絶滅危惧1A類に記載されているメダカOryzias latipesが少数だが確認された。

そこで、水域の一部に波浪の影響を受けない浅い湿地を創出し、不足していた水辺環境を担保することで、水生生物を保全・誘致することができると考えた。住友ベークライト株式会社の生物多様性への積極的な対応により、生き物のネットワークの拠点が整備されつつあるため報告する。


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