| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-254 (Poster presentation)

生産者の構造の違いによる物質循環を通した生態系機能への影響

福井眞(早稲田大・人科)

生物多様性が生態系の生産性や変動環境への抵抗性にもたらす影響を解析する研究は理論・実証ともに盛んに行われてきている。これらは生態系の一次生産者つまり植物の多様性に注目したものが多い。分解過程における多様性は生産者の多様性と同様に、生態系の生産を安定化させることが出来るだろうか。物質循環をとおして、植物−微生物−土壌フィードバックの影響により、微生物群集の多様性は植物の共存を促進することが理論的に示唆されている。これは植物の成長・競争特性とリター分解性が種によって異なることが背景にある。陸上植物を対象とすると、リターの分解性については、同一の植物個体の中でも異なる部位が存在する。地上部に注目するとそれは植物の構造を維持する骨格(木本植物では幹や枝)と、一次生産の場となる葉である。これらの部位は植物個体の中で機能が異なっており、構成する成分も異なる。リターの分解性はその構成成分に依存することが考えられる。本研究ではこの植物の個体内の機能の違いとこれに伴う分解性の違いに注目してモデル解析を行った。植物の異なる機能への資源の投資によって微生物群集の多様性へのインパクトが異なった。また、微生物群集の多様性が、構造上の違いを持つ植物の多様性の創出維持にもたらす影響を評価した。植物が陸上に進出し、構造を複雑にしていく過程とその生育環境にどのような微生物群集が存在していたかについての考察を行いたい。


日本生態学会