| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-262 (Poster presentation)

種内競争と種間競争のトレードオフ構造がもたらす多種共存メカニズム

小林和也(京大院・農・昆虫生態)

生態学は遺伝子から個体、群集、生態系に至る各スケールに応じた諸分野によって構成され、それぞれのスケールに応じた理論が発展してきた。近年、これらの理論を分野を超えて統合することで、各分野に残された謎を解き明かそうという試みが広がっている。今回、オスへの投資が種内競争上では有利だが種間競争上では不利となるため、種間競争に弱い種ほどオスへの投資を減らし、結果として安定的な多種共存が生じることをシミュレーションモデルで示す。このモデルでは種間競争に弱い種は相対的に低密度で個体数が安定するため、有限集団を想定した場合には絶滅確率が高くなるが、無限集団を想定した場合には種数を制限する要因がなくなる。実際、シミュレーション上では総個体数が十億の場合には90種以上が1万世代にわたって共存した。この結果は、行動生態学が扱ってきた性比理論を個体群動態や群集動態を想定したモデルに組み込むことで、個体群生態学で扱われる密度効果の実態を示唆し、ニッチを共有し増殖力の異なる複数種の共存機構として新たな仮説を群集生態学に提示している。つまり、各分野だけに着目していては発見できない未開の地が各階層のはざまに取り残されていることを示している。この結果を共有し、実証可能性と更なる理論的拡張について議論を深めたい。


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