| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-267 (Poster presentation)

仙台市沿岸部水田域の津波後の鳥類生息状況

平泉秀樹(南蒲生モニタリングネット)

東日本大地震の1年後の2012年春から仙台市沿岸の仙台東土地改良区(2365ha)で津波の鳥類への影響のモニタリング調査を開始した。沿岸の水田域は津波で最も大きな面積が影響を受けた環境であり、調査地域も大部分が津波の範囲内にあるが、南西部は津波の影響を受けていないか仙台東道路で津波の勢いが弱められている。被災農地は内陸から海岸側に向かって帯状の3つの区域に分けて段階的に復旧が行われ、調査開始時には最も内陸側の区域は営農が再開されていた。

調査はポイントセンサス(半径50m10分間約30地点)のほか、車でくまなく巡回して大型の鳥類(サギ類、猛禽類、ハクチョウ類等)の利用地点を記録する全域調査(毎月1〜数回)も行った。

繁殖期のポイントセンサス(5・6月各1回)では、草地性のヒバリ、セッカやツバメ、カルガモが次第に減少しており、農地復旧により利用環境や食物量が減少しているものと考えられる。水田の復旧のためか、ダイサギ、チュウサギやウミネコは次第に増加していた。トビとハシボソガラスは2012年にのみ少なかった。

繁殖期のチュウサギの分布は、2012年の6~7月には南西側の津波の影響がない(または軽微だった)水田に集中していたが、8〜10月には北側の復旧した水田にも分散しており、食物となる小動物の回復が影響しているものと考えられる。その後の農地復旧によりサギ類の分布は全体に広がっているが、翌年以降も復旧されたばかりの水田にはサギ類が少ない傾向が認められた。ダイサギは2012年には沿岸の県道の陸側に引き波で掘られてできた溜まりで多く確認され、その後も農地復旧が遅かった沿岸寄りの水田を多く利用しており、復旧が早かった内陸寄りで多く見られるチュウサギより遅れて増加していた。


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