| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-281 (Poster presentation)
近年ニホンジカの生息数が増加し、森林生態系への影響が深刻化している。シカ類の生息状況や生態系への影響を簡便にかつ定量的に評価するための一手法として植物指標種を利用した評価手法が挙げられる。しかし、単一の指標種を利用する場合、評価の対象地域はその指標種の分布や資源量に制限されるというデメリットがある。そこで本研究では、複数の指標種を選択し、各指標種に対するニホンジカの採食状況を調査した。
調査は、2014年~2015年の6月及び8月に道有林釧路管理区及び胆振管理区で実施した。各管理区を5つの調査ユニットに分割し、各調査ユニットに10m×10mの方形区を4カ所ずつ設置した。各方形区を踏査して指標種を選択するとともに、指標種の草丈、開花及び食痕の有無を記録した。指標種の選択に当たっては、①調査地に広く分布し、資源量が多い種であること、②対象とする種または属(以下、種とする)の同定が容易な種であること、③ニホンジカによる食痕の判別が容易な種であること、④草丈や開花率、葉数など測定が容易な形態的特徴を有する種であること、⑤サイズが大きく、発見しやすい種であること、を考慮した。さらに、各調査ユニットに12台の自動撮影カメラを設置し、7月~9月における1日当たりのシカ撮影枚数(撮影頻度)を算出した。調査の結果から、釧路管理区ではオシダ、エンレイソウ属、サラシナショウマ、バイケイソウ、アザミ属及びオオハナウド、胆振管理区ではオシダ、エンレイソウ属、サラシナショウマ、バイケイソウ、アザミ属及びモミジガサを指標種の候補として選択した。本発表では、自動撮影カメラによる撮影頻度と各指標種の食痕率との関係を指標種間で比較し、複数の指標種を用いた評価手法の有効性について議論する。