| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-282 (Poster presentation)

サイズ依存共食いが及ぼす新規加入個体群への影響―捕食効・非捕食の相対的効果―

岡野淳一(京大・生態研セ)

砂巣を持つ水生昆虫フタスジキソトビケラは、大きい個体が小さい個体を共食いするが、相手が小さすぎると巣に侵入できないため、餌サイズに下限が存在する。また、本種の個体群の体サイズ分布にはよく二峰性が認められるが、これは小型個体が大型個体に食べられないサイズで成長を抑制している(もしくは、させられている)ためと考えられる。

本研究では、大型個体の個体数密度によって、小型個体に対する直接的な捕食効果と、成長抑制という非捕食効果の相対的な重要性がどのように変化し、またその結果、個体群集団のサイズ分布にどのような影響を及ぼすかを検証した。その結果、大型個体の密度が高いと、小型個体の成長抑制が強く働き、大型個体が巣に侵入できずに共食い頻度が低くなる。一方、大型個体の密度が低いと抑制効果は弱く、小型個体は成長することができるが、その結果、大型個体が巣に侵入し共食い頻度が高くなることが示唆された。

本発表ではさらに、本種に巣材選択の多型があることを紹介し、サイズ二峰化、共食いの捕食・被食効果の相対的重要性が多型の維持に貢献している可能性を議論する。


日本生態学会