| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-288 (Poster presentation)

奈良県高見川におけるアカザ(Liobagrus reini )の生息環境

*鶴田哲也・山本健太郎・笹井聖将・安達祐貴(大阪産大人間環境)

ナマズ目アカザ科に属するアカザ(Liobagrus reini )は、河川中上流域に生息する日本固有の底生性淡水魚である。本種は環境省のレッドリストで絶滅危惧II類に指定されているものの、分布や個体群動態に関する情報が極めて断片的であるため保護対策が特に行われていないのが現状である。そこで本研究では、アカザの保全に資する情報を得ることを目的として、生息環境の詳細および食性に関する調査を行った。

奈良県東吉野村に位置する高見川とその支流に6地点の調査区間を設け、2014年6月、8月、9月および10月に野外調査を実施した。各調査区間では物理環境(水深、流速、底質粗度、川幅および水温)を測定するとともに、背負式エレクトロフィッシャーとタモ網を用いて魚類採集を行った。アカザが捕獲された場所については、水深、流速および底質粗度を測定した。また、体長40mm以上の個体についてはストマックポンプを用いた吐き出し方により胃内容物を採取し、80%エタノールで固定したあと実験室に持ち帰り食性解析を行った。

調査の結果、本種の大型個体は水深があり大きな礫のある場所に生息するのに対し、小型個体は浅く小さな礫のある場所に生息することが明らかとなった。流速については、体サイズにかかわらず比較的流れの緩い場所で多く捕獲される傾向が認められた。また、主な餌資源として河川内に豊富に存在するカゲロウ類やトビケラ類の幼虫を利用していることが明らかとなった。このようにアカザは成長に伴い生息場所をシフトさせることから、個体群存続のためには多様な環境が存在し餌となる水生昆虫が豊富である健全な河川環境を維持することが重要であると考えられる。


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