| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-290 (Poster presentation)

南九州フジツボ類の蔓脚への波当たりの影響

*吉田幸子・吉川朋子(玉川大)

固着生活をするフジツボは蔓脚で海水中のプランクトンを摂食する.アメリカ西海岸のキタアメリカフジツボや香港のクロフジツボの研究で,波当たりの強い所では蔓脚が短く,弱い所では長くなることが報告されている.クロフジツボでは、潮間帯の上部では蔓脚が長く,下部では短くなる.蔓脚以外でも,キタアメリカフジツボでは,殻の高さや厚さが波当たりにより異なることが示されている.これらは無柄目のフジツボに関するもので,有柄目のフジツボに関する知見は少ない.本研究では有柄目のカメノテCapitulum mitellaの形態が,波当たりの影響を受けるのか調査し,比較対象として無柄目のミナミクロフジツボTetraclita squamosaも採集した.

鹿児島県南さつま市において,カメノテを外湾9ヶ所,内湾17ヶ所,計26ヶ所で合計387個体を採集し,第6蔓脚の長さ,殻の頭状部長,横幅,投影面積,重量を測定した.蔓脚の長さと殻の重量には,外湾と内湾で有意な差がみられた.殻の縦横比には差がみられず,潮間帯上部と下部も,どの測定項目でも違いはみられなかった.ミナミクロフジツボは,外湾2ヶ所,内湾3ヶ所,計5ヶ所で合計86個体を採集し,第6蔓脚の長さ,殻底長径を測定した.外湾と内湾で蔓脚の長さに有意な差はみられず,これは採集地が少なかったためと考えられた.しかし,潮間帯上部では蔓脚の長さが下部よりも長い傾向がみられた.

有柄目のカメノテは,先行研究の無柄目フジツボ類と同様に,蔓脚の長さや殻の重量が波当たりの影響を受けていた.ミナミクロフジツボは少ないサンプル数にも関わらず潮間帯の上部と下部で違いがみられたことから,カメノテよりも生息潮位の影響を受けやすいことが示唆された.カメノテは柄部を持つために殻の形が波の影響を受けにくく,また岩の割れ目などに固着することから,形態が生息潮位に影響されにくいと考えられた.


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