| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-297 (Poster presentation)

生駒山におけるオオムラサキおよびゴマダラチョウの越冬幼虫数の5年間の動態

藤井太基(近畿大農),三日月茜(枚岡樟風高),澤畠拓夫(近畿大農),桜谷保之

オオムラサキとゴマダラチョウはエノキを食樹とし、根元の落葉下で越冬する。ゴマダラチョウは普通種であるが、オオムラサキは各地で個体数が減少し保護活動が行われている。この理由として生息地の分断等の撹乱に対する両種の耐性の違いが示唆されているが、さらなる知見の集積が求められている。生駒山においては近年生息地の分断は起きていないが、2011年度から2013年にかけてマイマイガが大発生し、その間にオオムラサキとゴマダラチョウの2種の越冬幼虫数の減少が観察されている。そこでこれら2種のマイマイガ大発生後の個体群動態に違いについて、越冬環境の適性と共に調査した。その結果、エノキ1本あたりの個体数は、オオムラサキが2011年度から5年間減少し続けたが、ゴマダラチョウは2012年度には減少ものの2013年度以降には、2011年度の水準に回復した。繁殖木数はオオムラサキで2014年度まで減少したものの減少に緩和傾向が見られたため回復が期待されたが、2015年度調査ではさらに減少率が増大した。ゴマダラチョウでは幼虫の個体数と同様の変化が見られた。以上よりオオムラサキはゴマダラチョウに比べ個体数の回復が難しく、本調査地においてはこの5年間で回復の兆しは見られず、さらに長い時間が必要であることが明らかとなった。本研究で示したような、一度個体数が減少した際のその後の体数の回復までに費やされる時間の違いがオオムラサキとゴマダラチョウの生息状況の違いを生じさせる一因であると考えられる。以上に加え2014年度に幼虫が確認されたエノキで、2015年度には生息が確認されなかったエノキの周辺環境での調査を行い、繁殖木と非繁殖木の比較を合わせて報告する。


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